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京都地方裁判所 昭和42年(手ワ)254号 判決 1967年8月15日

原告

出来敏夫

被告

サン金属工業株式会社

右代表者

伴達明

主文

被告は、原告に対し、金四九九、六〇〇円および内金二一五、六〇〇円に対する昭和四二年四月一日から、内金二五〇、〇〇〇円に対する同年四月二九日から内金三四、〇〇〇円に対する同年五月一日から、各支払済まで、年六分の割合による金員を支払え。

被告は、原告に対し、金二五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年七月五日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決第一、二項は仮りに執行できる。

事実

原告は、主文第一、四項同旨、「被告は、原告に対し、金二五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年六月三〇日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。」との判決を求め、その請求原因として、つぎのとおり述べた。

一、原告は、被告の振出した左記(1)ないし(4)の約束手形四通の所持人である。

(1)金額 二一五、六〇〇円

支払期日 昭和四二年三月三一日

支払地 京都市

支払場所 西陣信用金庫西大路支店

振出日 昭和四二年一月三一日

振出人 京都市右京区西京極前田町二九番地

サン金属工業株式会社(被告)

代表取締役 伴達明

受取人 三和塗装工業社(原告)

(2)金額 二五〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四二年四月二八日

振出日 昭和四二年二月二八日

その他 (1)の手形と同一記載

(3)金額 三四、〇〇〇円

支払期日 昭和四二年四月三〇日

振出日 昭和四二年三月一日

その他 (1)の手形と同一記載

(4)金額 二五〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四二年六月三〇日

振出人 昭和四二年三月三〇日

その他 (1)の手形と同一記載

二、原告は、各支払期日に、支払場所において、(1)、(2)、(3)の各手形を呈示して支払を求めたが、拒絶された。

三、(4)の手形の支払期日に、本件訴状が被告に送達された後に到来したが、原告は、(4)の手形の呈示をしていない。

四、よつて原告は、被告に対し、(1)、(2)、(3)、(4)の各手形金および各手形金に対する各呈示の日の翌日((4)の手形については、支払期日)より各支払済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告は、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。

理由

原告主張の事実は、被告において自白したものとみなす。

原告主張の事実によれば、本件(1)、(2)、(3)の各手形についての手形金遅延損害金請求、本件(4)の手形についての手形金請求は、正当であるから、これを認容する。

よつて、本件(4)の手形についての遅延損害金請求について判断する。

本件訴状が被告に送達された日が昭和四二年六月二〇日(本件(4)の手形の満期日前)であることは、記録上明かである。

裁判上手形金の支払を請求する場合は、手形の呈示を伴わないでも、訴状または支払命令の送達により債務者を遅滞に付する効力を生ずる(大審院昭和二年一二月一〇日判決民集第六巻六八一頁。最高裁判所昭和三〇年二月一日判決、民集第九巻一二七頁)。

ところで、手形に第三者方払の記載がある場合、支払呈示期間内は、その第三者方に呈示することによつて、はじめて履行遅滞の効果を生ぜしめることができる(支払呈示期間経過後は、手形の主たる債務者の現実の営業所あるいは営業所がないときは住所で呈示することによつて、はじめて履行遅滞の効果を生ぜしめることができる)。

したがつて、本件のように、第三者方払の記載がある手形の満期到来前に、手形金の支払(将来の給付)を請求する訴状が、手形の主たる債務者に送達され、その訴訟係属中に、満期が到来し、支払呈示期間も経過した場合、支払呈示期間の経過と同時に呈示の効力が生じ、支払呈示の末日の翌々日から年六分の割合の遅延損害金が生ずるものと解するのが相当である。

したがつて、原告の(4)の手形金に対する遅延損害金請求は、昭和四二年七月五日から支払済まで年六分の割合による遅延損害金を求める限度において、正当として、これを認容し、その余は、失当として、棄却を免れない。

よつて、民事訴訟法第九二条第一九六条を適用し、主文のとおり判決する。(小西 勝)

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